息子の恐竜ブームに付き合ったら、羊膜類まで遡っていた話。
少し前、5歳の息子に恐竜ブームがやってきた。
きっかけはジュラシックワールドのテレビ放映。
恐竜の動画を見て、恐竜の名前を覚えて、
私のポリジェルを見ては、
「ママ、T-レックスのお爪みたい」
と喜んでいた。
最初に好きになったのはモササウルス。
その後アンキロサウルスを経て、最終的にはスピノサウルスに落ち着いたらしい。
ちなみに、以前はティラノサウルスのことを
「きらのサウルス」
と言っていた。
かわいいので訂正せずにいたら、5日もしないうちに「T-レックス」と呼ぶようになっていた。
Tは言えるんだ。
そんな恐竜ブームの最中、Amazon Prime Videoで恐竜の特集を一緒に見ていたときのこと。
解説の中で、さらっとこんな話が出てきた。
「モササウルスは、厳密には恐竜ではありません」
え。
あんなに恐竜コーナーにいるのに?
恐竜図鑑にも出てくるし、恐竜のおもちゃ売り場にもだいたいいる。
どう見ても恐竜チームの顔をしている。
でも調べてみると、本当に恐竜ではなかった。
モササウルスは海に暮らしていた爬虫類で、分類としてはトカゲやヘビを含む有鱗類の仲間。
恐竜とは別の系統にいる。
へぇ。
じゃあ、恐竜って何なんだろう。
ここで調べるのをやめておけばよかった。
さらに見ていくと、プテラノドンも恐竜ではなかった。
空を飛んでいて、恐竜と同じ時代に生きていて、恐竜図鑑には高確率で載っているのに、こちらは「翼竜」。
モササウルスより衝撃だった。
恐竜とは親戚ではあるけれど、別のグループらしい。
では、恐竜とは。
そこから系統樹を見始めた。
恐竜。
翼竜。
主竜類。
その上は?
そのまた上は?
分類の名前が出てくるたびに、
「これは何と何が含まれるんだろう」
とひとつ上へ戻っていく。
最初はモササウルスがなぜ恐竜でないのか知りたかっただけなのに、気づけばずいぶん遠くまで来ていた。
途中でかなり面白かったのが、今までざっくり全部「爬虫類」と思っていた生き物たちの関係。
トカゲやヘビのグループと、ワニや恐竜、鳥につながるグループは、系統樹を辿るとかなり手前で枝分かれしている。カメの位置については長く議論があるものの、現在はワニや鳥などの主竜類に近い側だとする研究が有力らしい。
言われてみれば、確かにワニとトカゲって肌の質感からして結構違う。
トカゲの肌には若干の鱗みを感じる。
今まで「爬虫類」という大きな箱でしか見ていなかったものが、系統樹を一度見ると急に別物に見えてくる。
そして、もうひとつ。
鳥は恐竜だった。それは分かっていた。
でも、思ったより「ちゃんと恐竜だった」だった。
鳥は獣脚類という恐竜の一群から進化していて、その系統にはT-レックスもいる。
しかも恐竜には昔から大きく「鳥盤類」と「竜盤類」という分類があるのに、鳥につながったのは鳥盤類ではなく竜盤類。
鳥なのに。
鳥盤類じゃない。
これは名前が悪いと思う。
そんなことを調べては、息子に、
「モササウルスって、トカゲとかヘビの方に近いんだって!」
「プテラノドンは恐竜じゃなくておともだちなんだって!」
と報告していた。
ある日とうとう、
「何言ってるかよくわからない」
と言われた。
ごもっともである。
息子が知りたいのは、おそらく「誰が強いのか」とか「どの恐竜がかっこいいのか」とか、そういうことである。
母だけが勝手に系統樹を遡っている。
それでも気になる。
主竜類のさらに先はどうなっているんだろう。
爬虫類と哺乳類はどこで分かれるんだろう。
そうやって枝を一本ずつ根元へ辿っていった結果、
最終的に「羊膜類」まで来た。
羊膜類。
恐竜を調べていたはずなのに、急に教科書のかなり前の方へ戻ってきた感じがする。
爬虫類も鳥も哺乳類も含まれる、大きな大きなグループである。
もうモササウルスからだいぶ遠い。
そして羊膜類の「単弓類」と「双弓類」という分類が気になった。
名前からは、何が単で何が双なのかまったく想像がつかない。
調べてみると、名前の由来は頭骨にある「側頭窓」。目の後ろあたりにある穴で、古典的にはこれがひとつなら単弓類、ふたつなら双弓類と分類されていたらしい。
まずそこで分けるんだ。
そう思ったら、今度は「そもそもこの穴は何のためにあるんだろう」が気になってきた。
というわけで現在、母は生物の骨格にまで手を出しそうになっている。
息子はというと、二週間ほど恐竜にどっぷり浸かったあと、
あっさりパウ・パトロールへ戻っていった。
そしてパウ・パトロールをもう一周した現在は、ポケモンに夢中である。
息子はとっくに中生代から撤収し、
母だけが、系統樹の根元の方に取り残された。
ちなみに、今もまだ掘っている。